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毎日フォーラム・特集:地下街再生 進む老朽化に対策急務  ..t      返信
 
  毎日新聞8月8日

◇全国79カ所 改修に国と自治体の補助制度創設

 全国の都市部の主要な駅などに作られた地下街の老朽化が問題になっている。国土交通省の調査では約9割が開設から30年を超えており、耐震診断が行われていないところも半数近くあるという。公表されている首都直下地震や南海トラフ巨大地震の被害想定では、天井などの崩落で多数の要救助者が発生するとされている。地下街はショッピングや飲食などの店舗の客ばかりでなく、公共用通路として多くの人が利用する歩行空間としても都市生活者には欠かせない施設になっている。こうした重要な都市機能を今後、どのように再生し維持していくかが大きな課題になってきている。

 地下街について、国交省は「地下駅の改札口外の通路、コンコースなどを含む公共の用に供される地下歩道と、当該地下歩道に面して設けられる店舗、事務所、その他これらに類する施設とが一体となった地下施設」と定義し、公共の道路や駅前広場の下も含むとしている。

 毎年のように完成する地下街もあれば廃止されるものもある。国交省によると、この定義に見合う地下街は7月末現在で全国に79カ所あるという。その多くは、高度経済成長期に車と人の交通が混み合ったことなどから、人が集まるターミナル駅などで道路や駅前広場の地下空間を活用するために、地下に公共用通路などと店舗が一体的に整備されたものだ。こうした公共用通路は地下街店舗の利用者だけでなく、多くの市民が行き交う生活空間にもなっている。

 国交省は今年4月、地下街の管理者向けに自己点検のチェック項目などをまとめた「地下街の安心避難対策ガイドライン」を作り、点検と災害時の避難計画の検討方法を示した。改修にかかる費用の3分の2を国と自治体で負担する補助制度も今年度に創設し、管理者への説明会などを通じて安全対策の徹底を促している。

 しかし、補修費の補助制度を設けても、老朽化対策や安全点検の実施はそれぞれの管理者に委ねられており、運営主体や個別的な事情もさまざまなためどこまで進むかは不透明という。

 このガイドラインを作るために、国交省は昨年3月までに当時あった78カ所の地下街の実態調査を実施した。そのうち46カ所は民間会社、31カ所は第三セクターの管理で、公営は神奈川県小田原市の地下街だけだった。

 ◇耐震診断をしているのは半数以下

 開設から30年以上経過している地下街は、68カ所で全体の87%にのぼった。耐震診断をしていたのは49%の38カ所で、その結果、耐震改修が不要だったのが19カ所だった。実際に耐震改修をしていたのは12カ所で、耐震改修が必要なのに実施していないところが4カ所あった。また耐震改修の一次診断だけで詳細な診断や改修方針を立てていない施設も3カ所あった。

 地下街は地下空間の安全性確保が重要なため、この調査では、地下街利用者の避難にも影響を与える天井の構造などを重点的に調べ、三つの問題点を指摘している。

 一つは漏水による天井下地などの不具合だ。地下街は構造全体が土中にあるため、地下水の漏水が起こりやすいことから、漏水に起因するシミやコンクリート中の水酸化カルシウムが表面に溶け出すコンクリートの「白華現象」などが起きやすい。目視点検でこうした不具合が多数発見された。国交省は、外観で漏水が疑われ、直近に点検口がない場合は、状況確認や継続的観察のための点検口の新設が必要としている。

 また、天井材や天井をつり下げている部材の脱落が見られたとも指摘。天井内部のハンガーが脱落するといったつり材が機能を果たしていない不具合も多く確認されたという。さらにコンクリートの打設不良のジャンカや鉄筋の露出、コンクリート断面の欠損なども見つかっている。

 国交省は「今回の一部の点検口からの調査でも、天井下地の不具合が発見されている。全ての点検口から点検を早期に実施することが必要」と結論付けた。地下街は公共用通路を有しているため全面的な改修は難しいが、ガイドラインは地下街の管理者の自覚を促している。
..2014/10/31(金) 12:22  No.3631
Re:毎日フォーラム・特集:地下街再生 進む老朽化に対策急務  ..t     
 
  ◇初の地下商店街「上野ストアー」1930年開業

 わが国の地下街建設は、1927年に、東京の浅草から上野まで地下鉄が開通したのが契機となった。駅にあわせて地下道が建設されて、そこに商店が張りつき、30年にわが国最初の地下商店街「上野ストアー」が開店した。以後、32年には「須田町ストアー」、33年には「室町ストアー」と「日本橋ストアー」、34年には、「銀座ストアー」と「新橋ストアー」が相次いで開店した。このように戦前は、地下鉄の駅に併設した地下商店街が中心だった。戦後は52年に「三原橋商店街」が、次いで55年に「浅草地下街」が完成した。浅草地下街は来年、築60年を迎える。国交省が昨年に一斉点検した地下街の中で、閉鎖予定のものを除くと最も古い地下街だった。

ひっそりとした三原橋地下街の入り口=東京都中央区銀座で4月12日
ひっそりとした三原橋地下街の入り口=東京都中央区銀座で4月12日
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 当時の地下街を分類すると、地下鉄の施設とあわせて開設された▽単独の商店街として建設された▽地上交通の混雑緩和を目的にした▽地下通路の設置にあわせて地下街として建設された▽地下駐車場にあわせて地下街を併設した−−ものなどがある。57年には、「渋谷地下街」や「名古屋地下街」、「ナンバ地下センター(現・NAMBAなんなん)」などが開業するなど、全国の地下街は高度成長に合わせて開業してきた。

 ところが、72年5月の大阪千日前デパートの大規模火災を契機に翌年7月に「地下街の取り扱いについて」という4省庁(建設省、消防庁、警察庁、運輸省)通達が出され、それ以後の地下街の新設・増設は厳しく抑制され、「地下街中央連絡協議会」の設置などが定められた。また、地下街中央連絡協議会は74年6月に「地下街に関する基本方針」を出して抑制方針を追認した。

 さらに80年8月に「静岡駅前ゴールデン街」でガス爆発事故が発生したことから、同年10月には、4省庁に資源エネルギー庁を加えて「地下街の取り扱いについて」という5省庁通達が出されて、規制がさらに厳しくなっていた。

 ところが転機は国から地方への権限移譲を求める地方分権改革の推進で訪れた。2000年4月に国からの機関委任事務を廃止することなどを柱とする「地方分権一括法」が施行された。これに伴って01年6月に、「地下街中央連絡協議会」が廃止され、4省庁通達と地下街に関する基本方針と5省庁通達も廃止された。現在は建築基準法や消防法、道路法などが地下街について安全基準などを個別に定めている状況だ。

 ◇大地震で津波浸水、要救助者の発生を想定

 都市部で地下街の果たす役割は大きい。地下街の利用者が1日当たり10 万人以上となる地下街も多数あり、都市機能を担う施設として欠かせないものとなっている。1日当たりの平均来場者が10万人を超すのは東京駅の「八重洲地下街」や「川崎アゼリア」、「ホワイティうめだ」など18施設あり、5万人から10万人未満が新宿東口地下街や京都駅北口広場地下街など7施設、1万人から5万人未満が博多駅地下街など17施設ある。

 首都直下地震と南海トラフ巨大地震での被害想定によると、地下街やターミナル駅が崩壊した場合には、津波による浸水被害もあって局所的に膨大な要救助者が発生するうえ、救助人員の確保が困難となるとされている。

 実際に発生した大地震で、地下街はどうなったのだろうか。阪神大震災の地下街の被害状況をみると 神戸市には「さんちか」と「メトロこうべ」、「デュオこうべ」の三つの地下街があり、三宮にある「さんちか」は震度7の分布域に位置して大きな地震動を受けた。しかし各地下街とも、地震による構造物の被害は、部分的なひび割れが生じた程度で、構造物全体が崩壊にするような大きな被害は発生しなかった。 構造部以外の被害では「さんちか」で天井板が1枚落下したほか、柱・壁仕上げ材の落下やスプリンクラーヘッドの破損・漏水などの被害があった。

 東日本大震災では、仙台市にある市営地下鉄は地下構造部分での大きな損傷はなかった。地震の直後は駅構内も非常灯を除いて、全ての照明が停止したが、パニックは起こらず、駅係員による誘導で全員の地上への避難が完了したという。また、仙台駅東西自由通路でも大きな被害はなかったという。ところが、震度5強を記録した東京では、古い浅草地下街で震災直後から地下水などの水漏れが目立つようになったという。

 地下の構造物は、地震時に地盤の揺れと同じ揺れをするため、地上の構造物のように地盤の揺れに合わせて建物自体が揺れて、揺れが増幅されるということがないため、地上構造物ほどには被害が生じないとされる。これに対して国交省は「地下施設だから地震に強いという安全神話には頼らないでほしい」と、地下街の耐震化など安全対策を求めている。

 国交省が今回まとめた「ガイドライン」では、「地下街の耐震化」と「非構造部材の落下防止」のための空間の安全性確保に向けた対策、混乱やパニックを予防する避難誘導の実現が必要として、利用者の落ち着いた避難行動への誘導方策などを記している。

 また、地下街の公共用通路についても、天井内と天井面にはスプリンクラーなど多くの設備機器が設置されていることから、天井と天井内空間の安全性の確保が重要とも指摘した。同省は「地下街の構造物の安全が確保できなければ、地下街の利用者や、地上への影響も甚大なものとなる。何よりも安全を確保することが重要」と結んでいる。

 さらに、大規模地震時には、避難経路の通行障害や接続する施設からの避難者の流入など予期せぬ事態が起こる可能性があるとして、シミュレーションなどによって避難経路上の課題を把握し、適切な対処方法を事前に検討することが必要としている。

 国交省は昨年度の調査に合わせて全国の地下街からヒアリングを実施しており、その際に現況の平面図や設備図などの図面を適切に管理しているかを確認している。平面図以外の図面がないケースや、図面はあっても現況を反映していないといった状況も一部の地下街では見受けられたという。

 そのうえで、適切な施設管理を行うために地下街管理者が地下街の情報を整理して適宜、追加更新を行うことが必要とし、過去の浸水区域や地上出入口の標高の把握、過去の改修履歴や設備の設置時期の確認、ガス管などで経年管の確認なども必要とした。地下街の耐震対策や避難対策などを進めるにあり、地下街の管理者が施設の現在の状況について正確に把握することを求めているわけだ。

..2014/10/31(金) 12:26  No.3632
Re:毎日フォーラム・特集:地下街再生 進む老朽化に対策急務  ..t     
 
   ◇巨大地震に備え浸水対策

 国の対策に先駆けて、再生に乗り出した地方自治体もある。小田原市は小田原駅東口の小田原地下街の再生のために、今年度予算に17億6500万円を計上した。今年11月に再開業を予定しており、観光振興への期待が高まっている。

 地震での浸水対策を進める自治体もある。南海トラフ巨大地震の津波被害に備え、大阪市内では今年3月、地下街の管理者などが集まって浸水対策を協議する「市地下空間浸水対策協議会」を立ち上げた。避難や止水対策で連携するためのガイドラインを今秋までに作成する。大阪府が昨年公表した被害想定を踏まえて、浸水の恐れのある出入口や換気口などを抽出するほか、初の相互連携訓練を来年度末に実施するという。

 JR神戸駅の地下街「デュオこうべ」などが浸水すると予測された神戸市では、デュオこうべを運営する「神戸地下街株式会社」が東日本大震災を受けて、浸水時避難確保計画を策定した。

 ここにきて長く親しまれた地下街が姿を消している。名古屋市では昨年3月、高度成長期の60年に建設された今池と千種の地下街が廃止された。市営地下鉄東山線の今池駅、千種駅につながる両地下街は、同線が延伸された時に開設され、それぞれ10店舗以上が店を構えた。

 52年にできた東京都中央区銀座の「三原橋地下街」は、三十間堀川を埋め立てた際にアーチを描く三原橋の下に残った隙間を利用して誕生した。映画館など約10軒が営業したが、地権者である都が取り壊しを決めて、この7月までに店がすべて立ち退いた。全国の地下街の中には、地域が一体となった再開発で生まれ変わろうという計画もあり、地下街への関心が高まっている。
..2014/10/31(金) 12:26  No.3633





  




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