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2015年のバイオ株投資は「収益重視」が有効、創薬関連に妙味―いちよし経済研究所・山崎氏 バイオ株の新春相場はエボラ出血熱禍で対策関連株がにぎわうといった派手なテーマ物色は鳴りを潜めた。しかし、承認申請や学術誌掲載などの発表を受け急騰する銘柄はみられ、セクターの持ち味である材料への感応度の高さは健在だ。長年バイオ株を見続けているいちよし経済研究所首席研究員の山崎清一氏に2015年の注目点を聞いた。(聞き手・矢野 伸)
――2014年は全般高にありバイオ株はおとなしかった印象だ。
「近年バイオ株は日経平均株価をパフォーマンスで上回ってきたが、2014年は下回った。為替の円安を受けて輸出主導型銘柄が買われ、円安メリット株でないバイオ株が割り負ける場面が多かったためだ。タカラバイオ<4974.T>などiPS細胞関連株が昨年不調だったことも響いた」
<そーせい、アールテックに注目、承認申請などを先回る>
――2015年はどうなるとみるか。
「このあたりで為替相場が落ち着くなら、日経平均が伸び悩む一方でバイオ株が脚光を浴びる状況が増えるだろう。iPS細胞関連株の低調はこれまでの反動ともいえるが、比較してそーせいグループ<4565.T>やペプチドリーム<4587.T>など創薬関連の銘柄が堅調だったことを踏まえると、損益面がこれまで以上に重視されそうだ。日本のバイオベンチャーは十数年の歴史を経て、赤字でも先行投資だから許すという夢を語る時期は過ぎた。iPSはまだ稼げる段階でないが、創薬は承認や承認申請の動きが増えてマイルストーン収入など当面の収益も得られやすくなっている。また、世界の7割を占める欧米など、世界市場を狙うべきバイオベンチャーらしい取り組みをみせる銘柄が改めて吟味され、評価を高めそうだ」
――注目の創薬銘柄はどれか。
「既に黒字街道を歩むそーせいとアールテック・ウエノ<4573.T>だ。そーせいは先ごろ2つの慢性閉塞(へいそく)性肺疾患治療薬を最大市場の米国で承認申請し、今年12月に承認予定。大手製薬会社しか見ずバイオ株を敬遠していた投資家も注目し始めている。アールテックは年内に世界初の網膜色素変性治療薬であり初の自社創薬ともなる『オキュセバ』で3月までに第3相臨床試験結果が出て年内にも承認申請の見通しだ。また機関投資家の注目度が高まっているのがUMNファーマ<4585.T>。画期的なインフルエンザワクチンが4−6月に国内で承認されることで黒字シナリオが描ける。バイオ医薬品の巨大工場を持ち、受託生産を引き受けられる希少な存在としてもマークしたい」
――創薬基盤のペプチドリームは株式新聞の市場関係者への15年相場見通しアンケートでバイオ株としてトップ評価だった。
「世界の医薬品づくりを変える可能性がある。いまの医薬品は低分子医薬と抗体医薬で成り立つが、ここにペプチドリームのかかわる特殊ペプチドが割って入ろうとしている。効率的に作成できる手法は、特許技術で固めたペプチドリームのみが可能。6社程度のビッグファーマと提携関係にあり、ビジネスは揺るぎない」
――バイオ株はイベントで大きく動くが、長続きしない傾向がある点がリスク要因だ。
「バイオ株は承認や承認申請の時期を読んで先回るのが肝心だ。デ・ウエスタン・セラピテクス研究所<4576.T>が昨年9月下旬に緑内障・高眼圧症治療薬の国内製造販売承認を受けたと開示したが、発表時はすでに急騰後の調整局面だった。大半が降りたあとだから発表自体のインパクトは限られる。また、最近材料が乏しかったナノキャリア<4571.T>やシンバイオ製薬<4582.T>、アンジェス MG<4563.T>にも年内の承認申請見込み案件がある。イベントの多さからもバイオ株が盛り上がる年となりそうだ」
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