<2015年注目テーマ(1)>可視光通信、ゲームビジネス、ウエアラブルコンピューター
投稿者: リチャード
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2014/12/31(水) 05:46 No. 70716 |
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<1 可視光通信が開く、新たな可能性>
目で見える光を用いた「可視光通信」の市場が本格的に立ち上がりそうだ。高速で点滅させてデータを送る仕組みで、人体や周辺機器に干渉する電波を発しないためペースメーカー利用者のいる病院施設などにも適する。狙った箇所だけに伝送する指向性の高さも特長だ。かねてからLED(発光ダイオード)照明が一般化したときに通信機能が組み込まれることで普及期に入るとの期待があり、現在はその局面を迎えた。
(主な関連銘柄) カシオ計算機<6952.T>―可視光通信とスマートフォンカメラを組み合わせた情報配信サービス「ピカリコ」を商用化 太陽誘電<6976.T>―LED可視光通信の高速化技術に長ける タムラ製作所<6768.T>―可視光通信のネットワーク機器を手掛ける 不二電機工業<6654.T>―発電施設メンテナンスや鉄道・駅連携システム用など研究開発 加賀電子<8154.T>―送受信モジュールなど各種関連機器を販売
<2 ゲームビジネス、海外に活路>
14年はスマートフォン(多機能携帯電話)ゲーム「モンスターストライク」のヒットでミクシィ人気が復活。ゲーム株全般のけん引役ともなった。ただ足元調整に入り、セクター全体の物色ムードにも響きそう。今後は銘柄の吟味が必要だ。
少子化による国内需要先細りの不安は根強く、各社は海外に活路を求めている。特に中国は市場規模が日本の10倍だけに、現地進出の動きが注目される。ミクシィとガンホー・オンライン・エンターテイメントは中国ネット大手テンセントを通じて展開。先ごろ始めたミクシィをガンホーが追い、2015年は海外実績での対決に関心が集まる。
(主な関連銘柄) ミクシィ<2121.T>―14年12月から「モンスターストライク」中国版を開始。東南アジアや欧州展開も予定 ガンホー<3765.T>―15年内に「パズル&ドラゴンズ」中国版を投入予定 カプコン<9697.T>―オンラインゲーム「モンスターハンターオンライン」の中国版をテンセントと共同展開 ネクソン<3659.T>―中国市場では「アラド戦記」をテンセント経由で提供 日本ファルコム<3723.T>―現地のゲーム開発大手と組んで2015年から中国市場にゲームアプリ投入
<3 ウエアラブルコンピューター、本格始動へ>
腕時計やメガネのように身に着けるウエアラブルコンピューターが、スマートフォン(多機能携帯電話)に次ぐ民生用電子機器市場の起爆剤として期待されている。ただソニー、韓国サムスンなどが先行するが、株式テーマとしては現状まで火が付いたとはいいづらい。やはり本命は米アップルだ。腕時計型「Apple Watch」を15年3月に発売予定でウエアラブル関連株相場が盛り上がる契機となりそう。超小型電子部品やハンズフリー操作を実現する音声認識システムの銘柄などが注目される。
(主な関連銘柄) ソニー<6758.T>―腕時計型「スマートウォッチ」をシリーズ展開 ローム<6963.T>―超小型生体センサーなど関連部品手掛ける リバーエレテック<6666.T>―世界最小の水晶振動子などウエアラブル端末向け部品開発 フュートレック<2468.T>―15年1月14日から開催の「第1回ウェアラブルEXPO」に出展 アドバンスト・メディア<3773.T>―音声認識技術を活用した物流業界向けウエアラブル型システムを開発 オプティム<3694.T>モバイル端末管理サービスのノウハウをウエアラブル端末にも応用 ジェイアイエヌ<3046.T>15年春にメガネ型端末「ジンズ ミーム」発売予定
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投稿者: リチャード ..2014/12/31(水) 05:48 No.70717 |
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<4 IT活用で生まれ変わる日本の農業>
15年は農業のテクノロジー化がいよいよ本格化する。東芝は無菌状態にした専用工場で光の波長制御技術や監視システムなどを駆使し、年間300万株のレタスを生産、3億円の売上を目指す。14年10月に開催されたエレクトロニクスの祭典「CEATEC JAPAN 2014」でも、多くの企業から農業に関する製品が出展された。
背景には、半導体やセンサーといった電子部品の生産・導入コストが低下したことに加えて、企業が「ものづくり」の分野で制御技術や生産管理のノウハウを積み上げてきたことがある。東芝以外にも、安川電機がロボットやモーション制御を応用した野菜工場システムを開発するほか、昭和電工はLED技術で最適な栽培環境を実現するなど、企業の強みによって切り口がさまざまあるところも興味深い。農業の効率化は、食料自給率や農家の高齢化問題にかかわるだけに社会的な意義も高く、今後の展開が期待される。
(主な関連銘柄) 東芝<6502.T>―植物工場で野菜を生産 安川電機<6506.T>―モーション制御やロボット技術で安心の野菜作り 昭和電工<4004.T>―LEDと高速栽培法で植物工場 富士通<6702.T>―半導体工場の一部を野菜工場化 住友精密工業<6355.T>―みかん栽培に機械学習エンジン ネポン<7985.T>―スマホやタブレットからハウスをモニタリング トプコン<7732.T>―GPS技術で農機が自動走行
<5 外国人観光客が拡大、インバウンド消費関連が浮上>
インバウンド消費は15年の中心的な投資テーマ。円安進行とビザ交付要件の緩和で、14年の訪日外国人は年間1300万人を突破し、東京などの都市部を中心に外国人観光客による消費が活気づいている。特に、訪日外国人消費額の3割を占める中国人旅行客の影響は大きい。観光庁の統計では、中国人旅行客の平均消費額は日本人の約2倍とされ、経済への影響が計り知れない。
恩恵が期待される主力銘柄では、免税店を展開するラオックスや、銀座に店舗を構える三越伊勢丹、松屋など。帝国ホテルや、ドーミーインを運営する共立メンテといった宿泊関連のほか、今や外国人の観光名所化しているドンキHDも有望だろう。また、日本の不動産も円安効果で海外からは安く見え、香港や中国のバイヤーを中心に注目されている。 (主な関連銘柄) ラオックス<8202.T>―全国で免税店を展開、6月に新宿出店 シュッピン<3179.T>―時計やカメラなどを免税販売 三越伊勢丹ホールディングス<3099.T>―新宿・銀座店舗は売上屈指 松屋<8237.T>―外国人観光客の多い銀座に店舗 帝国ホテル<9708.T>―東京・大阪ともに観光客で沸く 共立メンテナンス<9616.T>―ホテル需要増加で恩恵 ドンキホーテホールディングス<7532.T>―ディスカウントストアとして観光名所化
<6 広がる遺伝子ビジネス>
15年は遺伝子関連のサービスが、より身近なものとして提供されるだろう。14年、DeNAとヤフーは相次いで遺伝子解析サービスの提供を発表。米国では、すでにグーグルの創業者が出資するベンチャー企業が世界中で遺伝子検査キットを販売している。(一部、米当局が制限)
遺伝子検査が一般化すれば、遺伝子情報を踏まえた健康管理サービスや健康食品などを提供する企業も出てくるだろう。倫理的な是非を問う声もあるが、遺伝子情報を究極の個人データとしてマーケティングに活用しようという動きも見られる。今では簡単な検査が1万円以下で受けられるなど価格面のハードルも下がり、15年は遺伝子ビジネスに参入する企業が増えるだろう。
関連企業では、遺伝子検査キットを低価格で提供し、女性に人気の健康アプリも運営するエムティーアイや、ネット上で検査キットの提供や解析をするソフィアHDなどがある。
(主な関連銘柄) ディー・エヌ・エー<2432.T>―遺伝子検査サービスを開始 ヤフー<4689.T>―ゲノム解析サービスを提供 エムティーアイ<9438.T>―低価格の遺伝子検査キットを提供、女性向け健康アプリ「ルナルナ」も運営 ファルコSDホールディングス<4671.T>―遺伝子検査で予防医学を推進 ソフィアホールディングス<6942.T>―ネットで遺伝子検査キットを提供、解析 メディビックグループ<2369.T>―おくすり体質検査を提供 アデランス<8170.T>―毛髪に関する遺伝子検査キットを販売
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投稿者: リチャード ..2014/12/31(水) 05:50 No.70718 |
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<7 サービス分野ロボット、開発と普及が進む>
産業用ロボットで世界のトップを走る日本だが、今後は「パワードスーツ」などに代表される、サービス型ロボットの開発と普及に関心が高まりそうだ。2014年9月には「ロボット革命実現会議」がスタート、国家戦略としてしての実現計画が策定される見通し。政府の「日本再興戦略」では非製造分野のロボット市場規模を現状の600億円から20年に1兆2000億円へと拡大させることがうたわれている。少子高齢化が進む日本にあって、生産人口の減少をカバーする有効な手立てとなりそうだ。
(主な関連銘柄) サイバーダイン<7779.T>、菊池製作所<3444.T>、川田テクノロジーズ<3443.T>、 パナソニック<6752.T>、トヨタ自動車<7203.T>、ホンダ<7267.T>、 ソフトバンク<9984.T>―パワードスーツ、介護などサービス分野向けロボット マブチモーター<6592.T>、日本電産<6594.T>、 ハーモニック・ドライブ・システムズ<6324.T>―ロボット用部品
<8 地方創生、アベノミクスの新たな矢>
アベノミクスの新たな矢として関心を集めるとみられるのが「地方創生」だ。政府は地方活性化策の大きな柱として、東京に一極集中した中央集権的な現在の仕組みを変えること、若者の雇用創出、結婚、出産の支援、「地方特区」などで規制緩和を進め、地方の特性を生かした活性化策を打ち出しやすくすることなどを据えている。
具体策としては地方に移転する企業への優遇税制を設けたり国の研究機関の移転などを後押しし、雇用の場を創出するほか、人材の確保や地方の移転に向け「プロフェッショナル人材センター」「全国移住促進センター」などが設けられる見通し。消費振興、観光振興などを目的とした交付金も配分される。政府は公共投資を中心とする従来型の地方活性化策とは異なる手法を目指している。ただ、旧来の方式から完全に抜け出すことは難しいとの見方もあり、ゼネコンなども引き続きマークが必要かもしれない。
(主な関連銘柄) リクルートホールディングス<6098.T>、キャリアデザインセンター<2410.T>、 ヒューマンホールディングス<2415.T>など―雇用関連 一休<2450.T>、エイチ・アイ・エス<9603.T>、JR東海<9022.T>、 KNT−CTホールディングス<9726.T>など―観光関連
<9 リニア中央新幹線着工で、目が離せない土木関連>
2014年もたびたび相場のテーマとなったが、15年も引き続きマークしたいのがリニア中央新幹線の関連銘柄だ。2027年の開業を目標にJR東海がいよいよ工事に着手する。東京・品川と名古屋間を最短40分で結ぶルートは山岳トンネルが多くNATMと呼ばれる工法が使われる見通し。都市部もやはりトンネル区間が多く、シールド工法による建設になるとみられる。
車両費を含む総工費はおよそ5兆5000億円で、うち4割がトンネル工事、2割は軌道、1割程度は駅舎などに充てられる見込み。線路延長は286キロメートルで、下請けまで含めた経済波及効果は非常に大きなものになることが期待される。
(主な関連銘柄) 安藤・間<1719.T>、飛島建設<1805.T>、銭高組<1811.T>、 大成建設<1801.T>、大林組<1802.T>、鹿島<1812.T>、 鉄建<1815.T>、日本基礎技術<1914.T>など―トンネル掘削、鉄道工事など 岡部<5959.T>、前田工繊<7821.T>、太平洋セメント<5233.T>、 住友大阪セメント<5232.T>―資材関連 日立造船<7004.T>、川崎重工<7012.T>、日本コンベヤ<6375.T>、 コマツ<6301.T>、日立建機<6305.T>など―シールド掘削機、建設機械
<10 プロ野球16球団に拡大? 地方活性化目指す>
自民党の日本経済再生本部が14年5月に発表した「日本再生ビジョン」で、地方を活性化する観点からプロ野球球団数を12球団から16球団に拡大させ、2リーグ4地区制とする「プロ野球16球団構想」との構想が盛り込まれた。
本拠地候補としては「静岡県、北信越、四国、沖縄県などに球団の空白地域が残っており、プロ野球市場の拡大とそれを通じた地域活性化の可能性がある」と指摘。それぞれの地域である程度の規模を持つ企業などは球団経営、スポンサーとしてかかわる可能性は高い。
米国では55年前の16球団から現在は30球団まで拡大。球団数の増加が市場全体を活性化させ、12球団制を維持する日本との格差が広がっている。一時1リーグ10球団制と縮小方向にかじを切った日本プロ野球との差は、大リーグの高額年棒を見れば明らかだ。
ただ、球団経営は大きな人件費がかかり、13年だと横浜DeNA(DeNA<2432.T>)、東京ヤクルトスワローズ(ヤクルト<2267.T>)などは赤字。親会社として手を挙げる球団が本当にあるのか、また広島カープのように独立採算制で運営できるのか、球場の整備も含め難題は多い。
(主な関連銘柄) ヤマハ<7951.T>、スズキ<7269.T>(静岡)、四国電力<9507.T>、 フジ<8278.T>(四国)、北越紀州<3865.T>、亀田菓<2220.T>、 沖縄電力<9511.T>、沖縄セルラー<9436.T>(沖縄)―企業運営・スポンサー候補
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投稿者: 干支占い ..2014/12/31(水) 06:10 No.70719 |
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相場格言に「辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ。戌(いぬ)笑う、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)つまずく、寅(とら)千里を走り、卯(う)跳ねる」というのがある。14年の相場は午尻下がりを予見するかのように、日経平均株価は年初から下げでスタート。終値ベースでは4月14日に年初来安値1万3910円16銭まで下落し、13年12月30日の大納会終値1万6291円31銭から約14.6%の調整となった。
ただ、10月31日に日銀の「量的・質的金融緩和」の拡大とGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産ポートフォリオの見直しにより相場は上げに転換。12月8日には、取引時間中の高値となる1万8030円83銭まで上昇し、終値ベースでの高値1万7935円64銭を付けた。14年の大納会は1万7450円77銭で13年の大納会からの上昇率は7.1%となり、良い意味で格言は「外れ」ている。
15年は「乙未(きのとひつじ)」の年。60年前の1955年の日経平均株価は、始値361円10銭、高値425円69銭、安値345円89銭、終値425円69銭。前年終値からの騰落率は19.5%の上昇となっている。同年は自由党と日本民主党が合併し、自由民主党が発足。社会党が再統一され、いわゆる55年体制の幕開けとなった。日本住宅公団(現在の都市再生機構)が設立されている。トヨタ<7203.T>が「クラウン」を発売し、東京通信工業(現在のソニー<6758.T>)がトランジスタラジオを発売した年でもある。
その後の未年となる1967年の日経平均株価は始値1441円35銭、高値1506円27銭、安値1250円14銭、終値1283円47銭で、前年終値からの騰落率は11.6%の下落。トヨタが「2000GT」、東洋工業(現在のマツダ<7261.T>)がロータリーエンジン車の「コスモスポーツ」を発売している。
1979年の未年の日経平均株価は始値6041円57銭、高値6590円69銭、安値5925円87銭、終値6569円47銭で、前年終値からの騰落率は9.5%の上昇だった。米国と中国が国交を樹立。イラン革命が起こり同国での原油生産が中断、需給がひっ迫して第2次オイルショックが起こっている。ソニーがヘッドホンステレオ「ウォークマン」を、NEC<6701.T>がパソコン「PC−8001」を発売。NTT<9432.T>は自動車電話サービスを東京23区で開始した。
1991年の未年の日経平均株価は始値2万4069円18銭、高値2万7146円91銭、安値2万1456円76銭、終値2万2983円77銭で、前年終値からの騰落率は3.6%の下落だった。多国籍軍がイラク空爆を開始し湾岸戦争が勃発、その後には海上自衛隊がペルシャ湾へ掃海部隊を派遣した。ソビエト連邦が崩壊。日本初の衛星放送局としてWOWOW<4839.T>が本放送を開始した。
03年の未年の日経平均株価は、始値8713円33銭、高値1万1161円71銭、安値7607円88銭、終値1万676円64銭で、前年終値からの騰落率は24.5%の上昇だった。中国でSARS(重症急性呼吸器症候群)が、国内では鳥インフルエンザが流行した。小惑星探査機「はやぶさ」が打ち上げられ、地上デジタル放送が東京、大阪、名古屋で開始。エニックスとスクウェアが合併しスクウェア・エニックス(現在のスクエニHD<9684.T>)が発足した。
日経平均株価の騰落率を見ると1955年17.9%上昇、1967年11.0%下落、1979年8.7%上昇、1991年4.5%下落、2003年22.5%上昇。勝ち負けは3勝2敗、平均騰落率6.7%上昇となっている。干支別でみると、「辰」を先頭に「子」と続き、「未」は9番目。平均は10.9%上昇ということから「未」は平均以下で、やや分が悪いようだ。
関連銘柄としては「羊」から、ユニチカ<3103.T>、富士紡HD<3104.T>、日清紡HD<3105.T>、帝人<3401.T>、東レ<3402.T>などの繊維関連株だろう。「未」または「羊」が企業名に含まれる銘柄としては、未来工業<7931.T>、東祥<8920.T>、洋エンジ<6330.T>、東洋機械<6210.T>、東洋建<1890.T>、東洋合成<4970.T>、洋鋼鈑<5453.T>、洋ゴム<5105.T>、洋シヤター<5936.T>、東洋証<8614.T>、東洋水産<2875.T>、洋缶HD<5901.T>、東洋糖<2107.T>、東洋炭素<5310.T>、東洋電機<6655.T>、東洋電<6505.T>、洋ドライルーブ<4976.T>、洋刃物<5964.T>、東洋BENG<4828.T>、洋埠頭<9351.T>、東洋紡<3101.T>、白洋舎<9731.T>、菱洋エレク<8068.T>などが挙げられる。
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投稿者: WTIわっち ..2014/12/31(水) 06:12 No.70720 |
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14年終盤の金融市場をにぎわせたのは、間違いなく「逆オイルショック」だろう。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油、北海ブレント原油がこれほど下落すると予想した人間は誰一人いなかった。ニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTI原油先物期近物6月終値は1バレル=104.06ドル。それが12月29日には、09年5月上旬以来5年8カ月ぶりとなる52ドル台まで下落した。約半年で過去最高値の147.27ドルから32.4ドルまで急落したリーマン・ショック時ほどではないにせよ、金融市場に混乱をもたらしたことは間違いない。
<なぜ原油価格は急落したのか>
今年6月下旬頃から下落が続いていた原油価格だが、減産を行わなかった11月27日のOPEC(石油輸出国機構)総会を受け下落基調を強めた。12月に入ると米短期金利が上昇。原油先物市場は先物取引の約5割が投機筋と投機性が強く、レバレッジを掛けた投機が調達金利の上昇を受けて手じまいを開始。原油価格の下落は一部産油国の経済・財政上リスクと受け止められ、特にロシアは株価やルーブルが暴落。本来、原油安が好材料となるはずの日本やアジア諸国も連鎖的にリスクオフの流れとなった。
市場が原油価格の下落を限定的と見ていたのは、サウジアラビアの出方と石油需要の先行き予測を見誤ったから。市場関係者によるとサウジの14年国家予算前提は推定67ドル。ここを割り込めばサウジもOPEC総会で加盟国の減産要求に応じると思われたが、結局は黙殺。減産に応じる素振りすら見せなかったため、「サウジは米国のシェールガスを潰しにかかっている」との思惑が流れたほどだ。
また、石油需要予想に関しIEA(国際エネルギー機関)は12月、15年の需要増見通しを11月時点の予想から日量23万バレル下方修正。5カ月間で4回目となる下方修正で原油安の流れを決定的にした。IMF(国際通貨基金)は10月に世界経済見通しを下方修正しており、世界経済の先行き不透明感が石油需要増の修正要因になっている。
<来年前半も原油価格は低調か>
15年も前半は原油価格が低調に推移する可能性は高い。世界最大の石油消費国である米国の原油在庫は季節要因を考慮すると、過去12年間で最多水準に積み上がっている状況。シェールオイルとシェールガスの増産が続き、自動車の燃費改善などが拍車をかけている。また、昨年寒波に見舞われた米北東部が今冬は気温が高止まり傾向。米北東部が暖冬となれば、原油の現物需給改善は時間がかかる。前述したようにOPECは減産をせず、非OPEC諸国もロシアなど冬季は凍結などの影響により減産は難しい。WTI原油先物価格がこのまま50ドルを大きく割り込んでいくかは別として、供給がダブつき気味のため年前半、少なくとも春季を迎えるまで上値が重い展開は変わりそうにない。
一方で原油安により生産コスト割れしたシェールオイルを含む米中・小石油企業が撤退を始めており、米国からの供給は減少することが予想される。シェールオイルの平均コストは70ドル台とされる。技術革新によりシェール採掘コストは下がってきたようだが、現状の原油価格ではシェールオイル・ガスを生産するうま味はない。サウジなど一部中東産油国を除きロシア内陸部などの生産コストも60−70ドル台と目され、北海油田などは100ドルを超すのではないかとの見方があるほど。こちらもコスト的に見合わず新規案件は多くが延期・中止となりそうで、原油供給は予想以上に絞り込まれることもあり得る。
<FRBと日銀の動きには注意>
IEAは15年需要見通しを下方修正し続けるが、それでも前年から日量平均90万バレル(1%)増え9330万バレルになると予想。供給の増加が見込めなければ、原油価格はどこかで反転する可能性は高い。その他、中東、ロシアにおける地政学リスクが厳然として存在する。原油価格は地政学リスクに振れやすく、WTI原油が08年7月に147ドルを付けたのも、直接的にはイランの核開発疑惑に端を発したホルムズ海峡封鎖リスクが高まったため。イラクとシリアの一部を支配する過激派「イスラム国」の勢力拡大、イランの核開発問題、ロシアとウクライナの対立など産油地周辺のリスクは依然として存在する。年後半の原油価格は徐々に上昇すると見ておきたい。
注意したいのは、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げと日銀金融緩和の行方。いずれもリスク資産に大きな影響を与えるため、夏以降のFOMC(米連邦公開市場委員会)と日銀金融政策決定会合には注目が集まる。
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投稿者: 債券わっち ..2014/12/31(水) 06:14 No.70721 |
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2015年の円債市場見通しは、日銀の金融緩和策の効果とその行方が焦点となる。長期金利の指標となる10年国債利回りは、「0.5%を中心に推移。下限は0.1%で上限は1.0%で推移するだろう」(大手証券)との見方。
日銀は、国債買い入れによる資金供給を増やし、インフレ目標2%の達成を目指すとのスタンスを継続するため、大量の国債買い入れを継続、金利の上昇を抑制する。一方、市場参加者の多くを占める国内の機関投資家は、余剰資金を大量に抱え込んでおり、債券に対する購入意欲も強い。仮に、リスク優勢の展開となり、利回りが上昇(価格は下落)したとしても、日銀の買い入れが相場をサポート。良好な需給を手掛かりに、長期金利は上がりにくい状況が続く見通しだ。
足元では、10年国債利回りは14年12月25日に、13年4月5日につけた過去最低水準の0.315%を下回り、0.310%まで低下した。日銀が14年10月31日に追加金融緩和に踏み切り、国債の買い入れ量を大幅に増やして以降、利回りの自然落下が続いている。「政府が新規に発行する国債のほぼ全量にあたる国債を日銀が市場を通じて買い入れを継続しているため、品薄状態になった国債を国内外の投資家が奪い合う状況が続いている」(同)という。この間、原油価格の下落で国内の物価上昇率が鈍化した結果、市場では、「日銀が2%の物価目標を達成するため、再び追加緩和に踏み切る」との観測が広がった。さらなる追加緩和に踏み切れば、国債は品薄となる(債券価格は強含む)との読みが、利回り低下に拍車を掛けた。
13年3月20日に就任した黒田東彦・日銀総裁は、「(2%の物価目標の達成へ向け)できることは何でもやる」と就任当初から宣言。13年4月4日の「量的・質的金融緩和」に続いて、14年10月31日の追加の金融緩和では、国債購入額を年間50兆円ベースから80兆円ベースに増加させる一方、ETF(上場投資信託)やJ−REIT(上場不動産投資信託)の買い入れ額はこれまでの3倍(年間3兆円、900億円ベース)とした。特に、国債買い入れについては、購入平均年限を7年中心の6−8年という枠組みから、中心を定めず7−10年に長期化とした。
15年も日銀が必要と判断すれば、躊躇(ちゅうちょ)なく行動に移すとみられる。そうしたなかで、円債市場に影響を与えるイベントには、年央にも実施するとの観測が根強い米国の利上げや、9月の自民党総裁選などがある。日米の金融政策の違いから、米金利が上昇したとしても日本への波及は限られそうだ。一方の9月の自民党総裁選でもアベノミクスの失敗で政権の屋台骨が崩れるリスクはほとんどない。細かなところでは日銀審議員人事。「宮尾龍蔵審議委員が15年3月、森本宜久審議委員は6月に任期が訪れる。後任にはリフレ(通貨再膨張)推進派が選出される可能性が高く、長期金利の低位安定は盤石なものとなるだろう」(国内シンクタンク)という。
結局、15年の円債市場も14年に続いて日銀がかぎを握ることなりそうだ。「量的・質的金融緩和」が続く限り、金利上昇余地は少ない。言い換えれば、物価目標の達成や、あるいは長期国債買い入れが減るというような過程に入らない限り、長期金利の上昇は限られそうだ。
「10月の追加緩和で思い切った国債買い入れペースの引き上げで、今後の金融政策は『景気・物価の展開』と『異次元緩和の限界点到達』との時間的競争になってくるだろう。一段の金融緩和を実施するというのが市場のコンセンサスだが、買い入れペースの拡大は国債市中残高の枯渇を加速させかねない。このため、長期国債の買い入れ平均年限の長期化や、日銀当座預金金利(付利金利)の引き下げを予想する」(銀行系証券)との指摘もある。
日銀は金融市場に大量のマネーを流し込むことで、金利の低下やリスク資産の価格上昇を促し、金融機関がリスクを取りやすくなる環境を作る。そして企業への貸出増にもつなげ、最終的にはインフレ目標である2%の達成を目指す。15年の円債市場も日銀がかぎを握り、長期金利は低位安定で推移する見通し。
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投稿者: 為替わっち ..2014/12/31(水) 06:16 No.70722 |
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14年のドル・円は、10月31日の日銀金融政策決定会合で決まった追加緩和以降は景色が180度変わった。年初から8月までのドル・円は101−105円と狭い範囲での停滞が継続していたが、11月以降急伸している。
追加緩和は2年で物価上昇率2%達成が微妙となってきたタイミングの実施でインパクトは大きく、この日だけでドルは3円上昇。12月4日の衆院解散後は自民党有利の報道がドル高・円安に拍車を掛け、07年7月以来となる1ドル=121円84銭を付けた。外部に目を向けるとFRB(米連邦準備制度理事会)は、10月FOMC(米連邦公開市場委員会)で資産購入プログラム(量的緩和=QE)を終了。本格的に利上げへ向けて動き出した。FRBが気にする米国の景気と雇用は順調で、15年半ばから年末に利上げを行うとの観測は強い。一方、日銀は国債買いを続けており、日米金利差が一段と拡大するとの思惑もドル・円を走らせた。
<ドル・円は上昇要因そろう>
では、このドル高・円安は15年も続くのか。今年夏頃までのドル・円予測は「15年末までに120円到達」が大半だった。現在、主流となっているのは「来年末までに130円近辺」というシナリオ。黒田日銀総裁はデフレ脱却に向け、「できることは何でもやる」と言明している。追加緩和は長期国債(50兆円から80兆円に拡大)を購入するだけでなく、ETF(上場投資信託)などの金融資産を積極的に購入して市中に出る資金(ベースマネー)を大幅に増やすというもの。その本気度を見せつけたが、原油価格急落で2%の物価を限りなく難しくなっており、早い時期に再度の追加緩和を行ってくることは十分あり得る。
FRBは利上げを景気次第とはするが、雇用統計をはじめとした強い米経済指標から利上げに向けた環境は着々と整っている。FF(フェデラルファンド)金利先物の動向によれば、15年9月までに利上げが始まる確率は6割を超す。イエレンFRB議長は12月FOMC後の記者会見で1月と3月に開催されるFOMCは、「正常化プロセスが始まる可能性は低い」とした。逆に言えば4月以降は利上げが「あり得る」ということ。日米金融当局の金融政策に対するベクトルの違いを受けた金利差拡大から、130円到達はそれほど先ではないように見える。120円到達のシナリオに関し専門家がこぞって外れたことを考えると、140円到達も想定しておきたい。
ユーロに関してはECB(欧州中央銀行)のQE(量的緩和)実施がかぎ。ドラギECB総裁は12月ECB理事会後の公表文に、15年1−3月期に金融政策や物価動向などの評価を行ったうえで必要ならば(国債買い入れを含む)QEを講じる旨を明記した。1月もしくは3月のECB理事会でQEを実施してくるとの見方は多い。
ECBのQE実施は、当然「日本(円)>ユーロ圏(ユーロ)」を生む。ただ、SMBC日興証券は、「例えECBがQE導入に踏み切ってもQEの、言い換えればバランスシート拡大ペースは日銀が勝る可能性が高い」と指摘。15年後半には「ユーロ圏(ユーロ)>日本(円)」の優劣関係に回帰するとした。同証券は15年前半が「米国(ドル)>>日本(円)>ユーロ圏(ユーロ)」、後半は「米国(ドル)>>ユーロ圏(ユーロ)>日本(円)」の優劣関係を想定しているという。
<急速な円安進行時は政府の円買い介入に注意>
ただ、アベノミクス開始前は間違いなく円は買われ過ぎだったが、現状は明らかに「売られ過ぎ」という面は覚えておく必要がある。通貨の貿易上対外競争力を示す実質実効為替レートでみると、ドル・円は1970年以降で最安値の水準まで下落した。円安が続いたとしても、15年はここ1年間と比べると上昇は鈍化すると考えて良い。円安による輸入物価上昇の悪影響を被る中小企業や家計で不満が高まってきた。衆院選で勝利したとはいえ、政府も急速な円安が続くようなら警戒感を強めそうだ。不満が高まれば政府・当局の円買い介入もあり得る。
日本は11年11月4日に行った円売り介入以降、為替介入を行っていない。直近の円買い介入は1997年12月−98年6月にかけ数回行った程度だが、急落な円安進行が止まらずドル・円が130円を越えて上昇する場合は介入を警戒しておきたい。
<リスクオフ時は「ひとまず円買い」>
もう一つ14年終盤の逆オイルショックで改めて分かったことは、リスクオフ時「とりあえず円を買っておく」ことが金融市場でお約束になっていること。本来、原油安は日本経済に追い風だが、原油安によるロシア株とルーブル暴落に市場は打つ手がなく、リスクオフとして円買いが進行。「リスクオフ=円買い」の傾向はすでに固定されたもので、ロシアやウクライナ、過激派「イスラム国」の活動がやまない中東情勢、ギリシャの政局動向などで緊張が高まれば、特に理由もなく円は買われそうだ。
最後は国内の政治リスクを挙げたい。衆院選は自民・公明の与党が圧勝したが、来年は4月に統一地方選挙が行われる。衆院選の結果から与党の敗北は考えにくいものの、仮に大敗し自民党における安倍首相の求心力が揺らぎ構造改革や規制緩和が遅れるようなことになれば、海外投資家が失望し日本株売りにつながりかねない。株安はそのまま円の買い戻しを呼ぶことになる。
[ KABDAS−EXPRESS ]
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投稿者: 需給わっち ..2014/12/31(水) 06:18 No.70723 |
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2015年の需給を読むうえで、大きなポイントは2つ。買い主体としては、日銀によるETF(上場投資信託)買いとGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資金流入期待が引き続き相場サポート要因となる。日銀は14年10月31日、追加の金融緩和決定とともに、日本株と連動するETFの購入量を従来の3倍に増やし、年間約3兆円ペースとした。直近買い入れ額374億円(12月16日)を基準にすると、年間概算250営業日から割り出した購入可能回数は約80回。ざっと3日に一度買い入れが行われても良い計算になる。
GPIFも同日、国内株式の運用比率引き上げを発表し、同比率の目安として従来の12%を25%に上方修正した。運用資産約130兆円を誇る世界最大規模の公的年金が、仮に1%の資産再配分を行っただけでも新たに1兆3000億円の資金が株式市場に流入することになる。日銀のETF買いと合わせ、15年も注目すべき買い主体と言える。
ちなみに、東証が公表する投資部門別株式売買状況(東京・名古屋2市場、第1・2部等)によれば、年金基金の売買動向を反映する信託銀行は、月間で5−11月に7カ月連続で買い越し。その累計買い越し額は2兆3000億円を超える。12月に入っても第1週(1−5日)が1593億円、第2週(8−12日)が1918億円、第3週(15−19日)が1766億円の各買い越しとなり、信託銀行のロングランな買い姿勢が読み取れる。公的年金は資金性格上、積極的に上値を追わないとされるが、売り圧力を吸収するとともに下値切り上げ型の買いに動くとの読みも出ている。
もう一つのポイントは、メーンプレーヤーである外国人投資家の売買動向。14年相場では、2月初旬にかけて株価が大幅に下落し、外国人がそれを主導した。月間で1月は1兆1700億円近い大幅売り越しとなり、5カ月ぶりに売り姿勢に急転換。13年11月と12月には、買い越し額が2兆数千億円規模に膨らみ、相場上昇を演出していたが、反動から利益確定売りにカジを切った。その後、3月まで売り越しが続き、4月以降は金額に差こそあれ、総じて買い越し、売り越しを繰り返した。そして11月は1兆2580億円強の大幅買い越し(10月は3770億円強の売り越し)にシフト。言うまでもなく、10月31日の日銀追加緩和が突然の方向転換につながり、相場上昇をけん引した。
12月は、第1週が3851億円、第2週は1595億円の各買い越しとなったが、第3週は3629億円の売り越し。この週は、原油急落を背景とした欧米株安が波及し、リスク回避の流れから調整色が強まった時であり、海外勢の機敏な動きに振らされた格好だ。外国人売買では、ヘッジファンドに代表される短期筋が6−7割のウエートを占めるとされ、彼らは株価指数先物を交えて影響力を持つ。
新年相場においても、海外投資家が需給のカギを握るという見方に変わりはない。ただし、年序盤については、買い需要が期待される。円安・原油安に伴う企業業績の改善観測に加え、第3次安倍内閣下での政策期待が支えとなる。金融情勢では、12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見で、イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長が利上げは15年4月以降になると示唆。一方、原油安による物価上昇ペースの鈍化懸念から、日銀の追加緩和思惑も根強く、買い安心感につながりやすい。
むろん、今後の原油相場やロシア経済などの動向を見極める必要があり、米国が利上げに踏み切った場合、過剰流動性の変容から、外国人投資家、とりわけヘッジファンドが売り圧力を強める可能性は否定できず、年後半にかけては需給が不安定になることも想定される。
15年秋には、日本郵政および傘下のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険が同時上場する見通しにあり、この点も先行きの需給面で重しとして意識されよう。3社合計の初回売却規模は1兆−2兆円と推定され、東証1部売買代金の活況の目安となる2兆円にほぼ匹敵する資金が吸収される。その資金を捻出するために、指数連動型ファンドは同業銘柄の換金に動く必要があり、需給バランスを崩す要因になり得る。もっとも、逆張りスタンスにある個人投資家が株式投資を行う際の待機資金の受け皿となるMRF(マネー・リザーブ・ファンド)は11月末時点で11兆円超に上っており、大型上場・換金売りの伴う需給悪化を緩和する資金として期待する声もある。
新年は、日銀とGPIFの買い期待が続くなか、相場にインパクトを与える海外ヘッジファンドを中心とした外国人投資家の売買動向が一段と注視される年になりそうだ。
[ KABDAS−EXPRESS ]
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投稿者: 米国株わっち ..2014/12/31(水) 06:22 No.70724 |
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2015年の米国株式市場は、前半に上値を追う「スタートダッシュ型」となりそうだ。
利上げの開始時期とペースが焦点となる。
イエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長は14年12月16−17日に開かれたFOMC(米連邦公開市場委員会)後の記者会見で、利上げ開始時期について「少なくとも今後2回のFOMCで始めるとは考えられない」と発言。また、FOMCのメンバーの大半がタイミングを「年央」とみていると説明した。
2015年のFOMCの予定は、1月、3月、4月、6月、7月、9月、10月、12月の8回。イエレン議長の発言から利上げ開始時期は4月以降で、議長の記者会見のある6月と9月が有力とみられる。
逆にいえば1−3月の利上げはないともいえる。このため、同期間は安心感を支えに株価が上昇しやすいとみられる。足元では、景気回復の勢いが強い一方で、エネルギー価格の下落による低インフレで利上げを急ぐ必要はないとの見方もあり、株価上昇が続いている。15年始めは、この「高成長・低インフレ」という良好な環境を背景にした上昇トレンドが継続し、NYダウは1万9000ドルを超える展開が予想される。利上げが遅れるとの観測が広がれば、2万ドルに接近する場面もあり得る。
4月以降は、利上げを意識せざるを得なくなり、上値が重くなるとみられる。経済指標やFOMC後の声明文、FRB高官の発言などを受けた神経質な展開となりそうだ。同時に、利上げペースに関する関心も高まるとみられる。市場からは、「FRBの利上げペース見通しに比べて、現在金融市場が織り込んでいる予想は緩やかである。市場でFRB予想を織り込む動きが強まれば、株価が急落するリスクもある」(大手シンクタンク)と警戒する声がある。ただ、その場合でも、FRBの慎重スタンスが支えになりそうだ。13年に量的金融緩和第3弾(QE3)の縮小開始を示唆しただけで米国をはじめ、日本、欧州、そして新興国市場に大きな混乱をもたらした経験から、利上げ判断に対して極めて慎重に臨むとみられる。株価下落局面では、利上げ開始時期の後ずれ観測が浮上し、株価を下支えすることもありそうだ。
政治動向も要注目である。14年11月の中間選挙では野党共和党が上下両院を制し、その結果を反映した新議会が1月から始まる。16年に大統領選が控えているため、与野党の対立が深まることは必至だ。当面は、2月までしか手当てされていない移民制度改革に関わる国土安全保障省の予算をめぐる協議や、3月15日の期限を前にした連邦政府の債務上限引き上げをめぐる協議が注目される。協議の行方によっては、政府機関の閉鎖懸念やデフォルト懸念が高まる恐れがある。
とはいえ、野党共和党には、13年に政府機関の閉鎖を招いて世論の批判を浴びた苦い経験がある。大統領選を前に支持率低下につながる行動は避けるとみられ、最終的には政府と合意に達するとみられる。一方で、安易に妥協することもできないと予想される。協議が大詰めまでずれ込み、政治的リスクが嫌気される可能性は十分にある。また、これらの協議の状況によっては、9月末が期限の16年度予算をめぐる協議に対する不安が高まる恐れもある。最終的な合意が見込まれることから、持続的な株価下落要因にはならないとみられるが、短期的なリスクとなる可能性はあり、警戒は怠れない。
ロシア、ギリシャ情勢のほか、テロやエボラ出血熱などの病気もリスク要因。特にテロや病気は、利上げや政治動向と違って、突然状況が悪化する可能性があり、予測できない部分がある。株価水準が高い場合には格好の利益確定売り材料となり、その先行き不透明性のゆえに株価急落を招くリスクがある。
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